税理士事務所職員の本音-その確定申告の準備、大丈夫ですか?
2022.11.13 税理士事務所職員の本音-その確定申告の準備、大丈夫ですか?
11月も半分が過ぎようとしていますが、
確定申告が必要な方にとっては、
いよいよめんどくさい時期が近づいて来たという事になります。
申告の準備は出来てますでしょうか?
かくいう自分も確定申告が必要な人間なのですが、
資料整理だけで、データ作成までは出来ていません。
この記事を書いたら、データ作成を始めるところです。
さて確定申告ですが、個人ごとで必要な処理内容も大きく変わりますが、
個人事業の方や副業をされている方など、
資料整理が必須な方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
税理士事務所職員側からすると、
また資料もまとまっていないのに、「資料まとめた!」と連絡を受けて、
書類を受け取ってガッカリする時期になるのかと思うと、
切ない気持ちにになる季節でもあります。
税理士事務所職員での視点からすると、
資料の整え方やデータの作り方を工夫してもらうだけで、
精神的に大分違ってくるというものがあります。
・一番ありがたいのが、エクセルデータで帳簿が全て出来上がっていることです。
・一番ガッカリするのは、箱に分類せず領収証を詰め込んで送ってくることです。
税理士事務所職員だって、書類整理とかめんどくさいものはめんどくさいですし、
期限ぎりぎりに送ってきたら、処理ができる訳がありません。
個人の事情があるのもわかりますが、ほんのひと手間と配慮です。
それだけで、職員側としてどれだけ救われるかですが、
そこまでして頂けるお客さんはなかなかいません。
「お金払ってるから~」とか「書類整理ぐらいは簡単だし~」と
思われる方もいると思いますが、それなら資料整理専門の人員を割いて、
そちらでやって頂けますか?という事になってしまい、
大体はケンカになる話になってしまいます。
手間代はらうか、自分で全部やるかの二択です。
ちゃんとしたお客さんだけ集めるというのも難しいですし、経理事務得意な
事業主さんや社長さんというのは、本当に少ないのも実情です。
もともと日本の教育には、お金に関する教育を長らく疎かにしてきた
背景があるので、根本的に直すのであれば、教育もそうですが、
お金関係の建設的な話が苦手な世代が完全に入れ替わらない限り、
変わるのは非常に難しいと思います。
上記はともかくとして、
最低ラインやってほしい事、実際私が自分の確定申告処理の際に、
どのように資料を整理しているのかというのをお話ししたいと思います。
結論から言いますと、大体下記のとおりです。
・種類別にまとめておく
・日付は多少前後してもOK
・漏れなければ問題無し
・1枚の領収証に色々な項目が混ざってる場合は、大体のところにまとめて
おけば大丈夫。ただし、色々混ざってる旨のメモ書きはする事
・クレジット利用明細(買い物したときに受け取る領収証っぽい紙)は、
領収証本体と必ずセットにする。領収証本体をなくしたら、
付せん等でメモ書きしておく事
・種類別にまとめておく、日付は多少前後してもOK、漏れてなければ問題無し
税務署側も、概ね分類できていれば何も言わないですし、
むしろ焦点にするのは、その経費が仕事に必要な経費なのかどうかの
実体部分を重視するので、そういう意味で書類の紛失の方が問題になります。
書類整理で日付が多少前後していたとしても、何ら問題はありません。
証拠確保、保全が重要という事です。
・いろんな項目が混ざってても大丈夫
これも前項目に似ていますが、税法のルールで「帳簿に記載する」
という要件が非常に重要な要素になってくるので、記載できないと
対処のしようがありません。
項目も多少違うものが混じっていても、経費自体の正当性があれば、
それほど大きな問題になりません。
逆に言うと、どんなに変な項目入れたとしても、税法的に法律に従った
処理がなされていれば、問題無しとなります。確かに見栄えは若干
よろしくは無いのは否定できませんが、それ以上のものはありません。
・クレジット利用明細と領収証本体
結構な方、クレジットの利用明細と領収証をセットにしないので、
これも地味に困る要素になります。
経費の二重計上は非常にマズイ要素(税務署視点では架空経費計上)
になるので、これを防ぐためも資料整理が必要という意味合いもあります。
これらの項目、「見れば分かるのでは~」と指摘される方、
こういう処理をするお客さんを1週間の間に10件、20件、膨大な量を
やると考えてもらえればと思います。
ただでさえ、依頼主が手に負えないものを、同じものを何十件も
抱える事務所職員にやらせたら普通にパンクします。
専門家云々でなく、物理的に不可能です。
そこそこ年齢の行った世代の人材が在籍する税理士事務所ですと、
一人当たりが担当する確定申告の数はかなり重めにしていることが多いです。
労働環境、労基法云々の話もよく分かりますが、
40~50歳より上の世代の税理士事務所業界人は根性で駆け抜けてきているので、
身体を壊している人ですら、割とブラックな環境を良しとする傾向があります。
また、報酬のたたき売り合戦もある業界なので、「安かろう何とか~」と
いうのも結構あります。何かしら割引とかやっている場合は、よくよく確認を
された方が良いと思います。
「AIが~」と指摘される方、それであれば自分でやられることを
おススメします。
AIが確立しているのであれば、税理士事務所の経理処理業務部分は本当に
要らなくなります。なので、税理士事務所にお願いすること自体が非効率で
ナンセンスという話になってしまいます。
現在の会計ソフトの技術では、
紙の領収証を自動的に会計データにする技術は、確かに着実に進化しつつ
あるものの、まだ実用段階までに出来上がっておらず、預金通帳やクレジット
の月間合計利用明細のように、金融機関で既に電子情報になっているもの
であれば、会計データとして使用することは可能ですが、
結局は紙の領収証の整理および処理の重要性は変わりません。
上記の項目は現時点でもよく考えて立ち回る事が必要と思います。
もっというのであれば、担当してもらっている事務所職員とよく話をして、
どのように対応するのがいいのかをすり合わせておくのが大切です。
事務所によっては、本当に職員を使い潰しているところもあります。
信頼できると思った担当が、過労やうつとかで、知らぬ間に潰される
という事もよくあります。自分の実体験でもこれでした。
まだ未だに病気引きずってしまっているので、高負荷の仕事ができない状態
なので、割と困っていたりします。
(※最近は落ち着きましたが、デイトレ中も、病気の発作が出ると取引中断
することもあります。)
長くその人とお付き合いしたいのであれば、下記のどれかは対策として
やられるのが良いです。
・それなりの報酬を支払うこと(担当横取りのリスクあり)
・資料整理等、担当の方の負担が軽くなるような準備をする
・人材引き抜き
・独立してもらう
一般企業以上に、面倒な仕事の押し付け合いのある業界で、
あまり明言は良くないのですが、専門家業界なのに人材のピンキリが
恐ろしいほど激しい業界なので、大事な人材と思ったら、
出来る限りの配慮をしてもらえると、その方も大きな支えで助かると思います。
面倒な仕事が、本当に有り得ないほど面倒な仕事なので、
若い人のなり手が少なくなってきているという統計が出るのも頷けます。
※税理士試験の受験者数統計でそのようなデータがあります。
参考:MFクラウド(Freeeと双肩するクラウド会計の大手)
ともあれ、確定申告で税理士事務所にお願いしている方は、
是非ともご留意頂けると嬉しいです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
業界の一線を退いた身としては、思い出すだけでも今でもめまいがしますが、
それはそれ。経験や気持ちが少しでも伝われば幸いです。