元税理士事務所職員の本音-30万円未満の備品を全額経費。その処理ホントに大丈夫?
2023.2.16 元税理士事務所職員の本音
18時過ぎに仕事から帰還してツイッター等々、情報収集してました。
デイトレの情報を集めるも、それほどネタらしいものも出尽くしの模様。
それで、ネタでよく目にしたのは確定申告の話題です。
今日から確定申告の受付開始(還付申告は1月1日から既に開始済み)なので、
やはり話題に上がるのは自然な成り行きなのはよく分かります。
私自身、還付申告だったので既に1月の中旬に、
証券会社の特定口座年間取引報告書が出そろってすぐに申告しましたので、
完全に高見のk・・・ではなく、通常の仕事モードな状態です。
ナンデモアリマセンヨ?(´Д`)
さて、今日のツイッターのタイムラインで結構目にして気になったのは
「30万円未満なら経費で落ちる」という文言です。
確かに、これは間違えではないのですが、
ツイッターなので、130文字以内に前提条件等が全て書かれている訳でもなく、
なんか、誤解する人が出てきそうなので、見てて怖いなというのが
正直な気持ちです。
実際、私の知人の中に今年初めて確定申告するという人が居て、
この30万円未満の経費計上の件が、会話の中に話題で上がったのですが、
やはり、知らないとは怖い…と思う場面がありました。
ここで確認ですが、
「30万円未満は経費計上できる」というのは、
具体的にどのような条件なのでしょうか?
答えは
・青色申告の資格のある人が
・器具備品等の固定資産の1つ (*1 当たりの金額が30万円未満(*2の場合
・耐用年数に関係なく全額を経費計上(*3 できる
というものです。
※注釈について
*1 応接セットなどのように、1セットで初めて機能する場合は、
「セットの合計額」で判断します。
パソコンの部品なんか割と悩みどころですよねぇ・・・(´ー`)
*2 金額の判断基準で税込・税抜で迷うと思いますが、判断は下記の通りです。
・消費税申告で税務署に消費税納める人は「税抜」で判断(課税事業者)
・消費税申告が不要な人は「税込」で判断(免税事業者)
*3 経費計上方法は、概ね下記の手法となります。
なお、どちらの手法をとっても大丈夫です。
・固定資産に計上して「減価償却費」で全額経費計上する方法
・消耗品費勘定のような「費用科目」で全額経費計上する方法
注:どちらの手法でも、青色決算書の減価償却計算欄に記載は必要です。
少し書いただけでも、これだけの内容になります。
結構めんどくさい論点ですが、大きな経費計上をする論点なので、
税法でも細かくルールが決まっています。
国税庁のホームページにも、この辺がしっかり描かれているので、
参考に読まれる方は、こちらをご覧ください。
※ 補足:中小企業者と書いてありますが、個人事業主も該当しています。
本文にも、その旨の記載がありますので参考までに。
これを見ても分かると思いますが、
青色申告限定の制度となっております。
なので、白色申告の人はこの制度は使えないので注意が必要です。
なので、白色申告の人の減価償却費計算欄に「措法28」と書いて、
10万円以上30万円未満の備品等を全額経費で計上すると、
それだけで税務署から間違いの指摘を受けてしまいますので注意が必要です。
(補足:混乱を避けるため、20万円未満判定の「一括償却資産」の情報は
省略しています。気になる方は、別途ご確認ください。)
23.2.23 追記
20万円未満の一括償却資産の記事はこちらです。参考までに。
白色申告の人の対応方法については、
10万円以上の固定資産、例えばパソコンなどを買った場合は、
法律で決まっている耐用年数の期間内に、一定の計算方法で出てくる
経費計上額を使って「部分的に経費計上をする」という事になります。
なので、例で出したパソコンで考えると次の通りです。
【具体例】白色申告者 パソコン購入(器具備品)20万円(税込)
・一括経費計上の是非の判断
青色申告の資格なし → 一括で全額経費は認められない(措法28 適用不可)
・耐用年数 4年
耐用年数表の判断プロセス:
器具備品-事務機器、通信機器-電子計算機-パーソナルコンピュータ
・経費(減価償却費)計上額の計算
定額法(原則法) 購入金額×償却率(経費計上割合)
20万円 × 0.250 = 5万円 ・・・経費計上の金額(4年間 各年度同額計上)
定率法(例外*4) 未償却残高(経費未計上残高)×償却率(経費計上割合)
20万円 × 0.500 = 10万円 ・・・ 1年目の経費計上額
(20万円 - 10万円) × 0.500 = 5万円 ・・・ 2年目の経費計上額
(20万円 - 15万円) × 0.500 = 2.5万円 ・・・ 3年目の経費計上額
(20万円 - 17.5万円)× 0.500 = 1.25万円・・・ 4年目の経費計上額
*4 別途税務署に計算方法を申請した場合に認められる計算方法です。
固定資産の耐用年数については、下記の国税庁サイトにて確認ができます。
「確定申告作成コーナー よくある質問『減価償却費・耐用年数表』
また償却率の表は、下記の国税庁のサイトにて掲載があります。
「減価償却資産の償却率等表」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf
※左から、定額法・定率法(2年~26年)・定率法(27年~50年)
さらに法律原文をたどるならこちら
e-GOV法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」
いずれも、明確に記載があるので、法律解釈ではなく、純然たるルールに
沿って計算となります。
補足:4年目まで計算した後、1.25万円が経費計上が終わっていないので、
この分は次の年度で全額経費計上となります。
理由としては、償却率一覧表に記載されている「保証率」がポイント
「購入金額×保証率」で計算された金額がトリガー金額になり、
経費未計上の残高が、このトリガー金額を下回った場合、
次の年度では「償却率」ではなく「改訂償却率」という率を使って、
残りの金額を経費計上するというルールになっています。
なので、今回のパソコンの場合は、耐用年数4年とはなっている
ものの、実際には5年かけて全額を経費計上するというパターンと
なります。
早い年度で大きな経費を計上できる引き換えの小さなデメリット
みたいなモノだと思って頂ければよいかと思います。
白色申告は色々と省略していても、税務署からはあまり文句を言われにくいと
言われていますが、こういう部分で青色申告の特典が受けられないという
デメリットもあるので、しっかり利益稼いでいるという方は、面倒でも青色申告
の資格を取っておくことをおススメします。
最終的には、
「面倒だから多少多めに納税してもいい」なのか
「手間をかけてでも合法的に節税したい」かの気持ちとの天秤になります。
この点で、本当に若干数ですが、全て把握して天秤にかけたうえで、
あえて白色申告を選択する人もいるのも事実です。
私も過去に2人だけ遭遇しています。
別段、それが悪でもなんでもなく、自分が納得できるなら全然問題ありません。
むしろ否定するいわれはありません。気にしない気にしない(´∇`)
最後には自分の納得感で選択できているかという所だと思います。
税務署も、そういう所を踏まえていますので、
それぞれの選択肢なりの対応ですので、それを考えて選択するのが
良いと思います。
でも、結局知らなきゃ選択できないので、
やはり勉強は必要・・・めんどくさいものです。
お金を取るのか、手間を取るのか。
それはあなた次第、なのです!
以上、今日ちょっと気になったので、元職員がつぶやいてみました。
確定申告をやらないといけない方は、とりあえず頑張りましょう!
多少間違ってても大丈夫です。
指摘されたら、正直に謝って直せば問題無いので、
まずは自分ができる全力でやってみましょう。
無理なら、信頼のおける専門家に投げちゃいましょう。
(お金は掛かっちゃいますけどね。でも費用対効果)
ではでは~。