疲れ果てた元税理士事務所職員の備忘録

よく観察し、自分で納得し、決断してすぐ動くべし。

元税理士事務所職員の本音-確定申告は何が怖いのか?

2023.2.12 元税理士事務所職員の本音

 

いよいよ本格的な確定申告シーズンとなりました。

確定申告が必要な人たちにとっては、戦々恐々の時期かと思います。

税理士事務所に居た頃も、この時期のめんどくささは、

ほんと何度思い出しても吐き気がするレベルのシンドさです。

専門的に仕事してきた私ですらもこういう感じなので、

一般の方たちから見たら、恐怖以外の何物でもないのは仕方ない所かと

思います。

全自動でやってくれないかなぁ・・・と思うのも人情です。

 

確定申告は、

守るべき事さえ間違えなければ、それほど心配はいらないという側面も

あります。

覚えておいてもらいたい点としては、

計算間違いがあっても

1. 税金を多く払ってしまうような計算ミスは、税務署側は全く怒りません。

 訂正するかどうかは「本人の権利」なので、権利行使するかは自由となります。

2. 仮に計算ミスが分かって追加納税が必要な場合は、

 分かったところで早めに修正の申告をすれば、これも全く怒られません。

 ※ただし、申告期限(3月15日)以降から間違い修正完了日までの

  いわゆる放置期間分の罰金はありますので、その分は追加納税分と合わせて

  利息として支払があります。

 

結局のところ、

「納税金額を少なくごまかしちゃアカン、不正還付はもっとアカン」

というのが結論となります。

 

実はこんな話がありまして、

国税庁の長官や幹部クラスの人は、例えば税務経理協会という出版社から

毎年新年度ごとに「確定申告の手引き」という分厚い本を出版していますが、

その執筆をその時に在籍している幹部クラスの方が加筆修正していたりします。

上記以外にも税務関連の出版物は、結構国税庁内のお偉方が執筆することが多く、

書籍の数も、税法の種類やジャンルの種類など、多岐にわたっているので、

出版物もたくさんあります。

国税庁側職員が執筆するのは、国の税法運用指針等を明確にする意味合いもあり、

公務員の副業というものではなく、列記とした国からの業務命令での執筆なので、

正当に印税か原稿料をもらう事となります。

聞いたところでは、この収入がなかなかバカにできない金額になるそうです。

そのため、執筆をしている国税庁関係者も当然確定申告をしております。

この確定申告の際に、国税庁内部の人間が確定申告の内容をミスって

納税額が少ない内容になってしまっては一大事になるのは

皆さんも想像できるかと思います。

なので、これを防ぐ意味で、正確に計算したものに加えて、概ね10%程度の

納税額が増えるような形で確定申告をしているというとのことです。

平たく言うと、正当な金額よりも多めに納税しているという事です。

※以前の記事にも書きましたが、大学で税法の講義を担当していた教授が、

 国税庁勤務をしていて、内情の話の際に話題として挙げていた内容です。

 さすがに嘘ではないと思いますが、伝聞なのでご容赦ください。

 

国税庁内部の人でも、このような対応をしているという事なので、

基本的に国税庁側のスタンスとしては「完ぺきな申告内容は無い」、

という風に考えているというのは分かると思います。

国税庁側が激怒するのは、

「収入・利益を隠して納税額を意図的に少なくごまかす事」に尽きます。

そう、「脱税」です。これを絶対に許さないのが国税庁です。

これの関連内容で、「不正に税金還付を沢山する事」も含まれます。

人間なので間違う事もあります。なので間違いに指摘があれば、

素直に謝って修正対応が一番負担が軽くなります。

 

このスタンスの前提としては、

「間違う事もあるけど、性悪説観点で少なからずごまかす」という

見方をしているのも国税庁(税務署)でもあります。

なので、取り繕って「間違えちゃいました」と言っても、

本当に意図的でないというのをこちらが姿勢で示さないと

悪意で隠したと認定されてしまうため、

早い段階で気づいて自主的な修正は大切だったりします。

今まで自分の申告内容に気になる点があるようでしたら、

見返して、場合によっては資料を持って税務署に相談でも良いと思います

税務署での相談については、時期的には税務署も繁忙期に持って来られると

困ってしまうので、個人所得税の確定申告と、3月決算の会社の法人税申告の両方が

一区切りする6月以降に持っていくのがベターと言えます。

 

個人事業主で決算書を作る方にも言えますが、

例えば、経費の勘定科目の入れる場所を間違えたとかだったら、

税務署は、別段うるさくは言ってこないので心配はいらないのですが、

経費として支払っていないものを、意図的に金額を水増し(いわゆる架空経費)

をしたり、収入があるのに、金額を少なく申告する(いわゆる収入隠し)とか

やると、滅茶苦茶怒られます。というか普通に脱税なので犯罪です。

税務署も、明治29年(1896年)に発足以来127年もの歴史があります。

当然、調査技法の蓄積と進化も、その歴史の長さだけ濃厚です。

そういうのを相手に、確定申告をやるようになって高々数年~十数年の人間が

太刀打ちできる訳は無いので、高を括って分からないから大丈夫だろう的な

事をやっても、見つかるタイミングが後か先かなので、真っ当に申告する事を

おススメします。

ほんと情報収集能力は、日本国内の省庁の中では確実にトップクラスです。

私自身も税務調査の立ち合いで、その凄さを何度も目にしております。

調査官が集めてきた証拠書類を元に、納税者側が提示した証拠との矛盾を

論証されて所得隠しを認定されることもありますので、

本当に隠したのではないという論証をするのであれば、

意図的に隠すような申告はしないのが一番です。

 

結局、国税庁(税務署)は不正を見つけ出して、正しい数字を見つけ出すので、

誤魔化すのは容易ではありません。

税務調査官もピンキリはありますが、調査能力は侮れません。

税務調査中の調査官との雑談も全く雑談ではないので、

調査官の行動すべてが情報を洗い出す動きなので、絶対に侮ってはいけません。

こういう調査能力に対抗する手段は、

正当な資料提示と論証が王道ですが、世の中にはいろんな人が居るもので、

納税者側が、明らかに法に触れる抵抗手段をとる方も一定数います。

そういう場合は、状況によってはマルサなどのような特別調査チーム対応

といった具合になる事もありますが、それこそ悪質な案件の全面戦争みたいな

状況になります。(※ 滅多には起こりません)

ともあれ、我々一般人であれば、とりあえず素直に対応しておくのが一番です。

 

これから確定申告シーズンの本格化という事で、

税務署側も本格的な繁忙期となります。

税務署に限らず、確定申告に関連のある部署(市役所の税務課など)とかも、

3月15日に向かって、超絶繁忙期に入ります。

役所側は、3月15日の期日が過ぎたとしても、それ以降申告データの処理等で

1ヶ月前後は超絶繁忙期が続くこととなります。

役所側も、そういう所はホント大変だと思います。

だから電子申告云々とかを推すのも、致し方ないと言えます。

 

あとは、コロナ感染症による申告期限延長ですが、

確かに今年もありますが、個人的にはこれに頼るのはやめた方が

良いと思ってます。

先延ばしにすれば、自分が抱える他の仕事とかにもしわ寄せがくるので、

その観点から、期限延長は頼るべきでないと思います。

ただ、個人ごとに色々と事情がありますので、

やむを得ないなら、当然この期限延長はしっかり利用していいと思います。

全くコロナ感染症の影響がないのに、期限延長を利用するのは危ないです。

これには理由がありまして、

国税庁のホームページにも記載があるのですが、

「~やむを得ない理由等について税務署からお尋ねする場合があります。」

と明文があります。

この文章の意図としては、当然問合せしますよ、という意味合いですが、

この「お尋ね」というのがポイントで、いわゆる実態調査となります。

考えられる調査としては、申告時期にコロナ感染症で入院等によって

申告処理ができないという相当の理由の根拠資料を出せと言われる

可能性があるからです。

これで根拠資料が出せないとなると、期限に間に合ってなければ

「期限後申告」という取り扱いで、これだけでも罰金が発生します。

※ただし、税金還付申告の場合は罰金は発生せず、期限に遅れても

 お咎めは無いので安心してください。

あとは、税務調査の口実にされてしまう要素でもあるので、

要素を潰しておくという意味合いもあります。

 

どちらにしても、ルールを守った申告であれば基本的に心配はいりません。

申告したものが心配であれば、税務署に資料を持って相談するという

対応で良いと思います。

自分の収入・利益は、自分が一番よく分かる事です。

それを踏まえて胸張って進められるかで考えるのが一番だと思うところです。

ほんと、誤魔化してもいいことはありません。

 

ということで確定申告についてでした。

知らないから恐怖するというのが大多数ですので、

正確に知って、正しく程よく恐れるのがちょうどいいのかなと思います。

分からなければ、とりあえず実体が見えるまで手を尽くしてみましょう。

皆さんはどう感じるでしょうか?

あとはご本人次第です。

 

ではでは~。